日記 > 日本編 > 香奈子 熊野古道を行く > 終わりに 旅を終えて








           ツヅラト峠・見晴らし台にて
歩いている時、何を考えていたか

いろいろな考えが浮かんでは…消え
消えては…また浮かんだ

追わずに…ただ流れてゆく
ぐるぐると想いが巡るだけ

芝居のことや歌のことは、ほとんど考えなかった…

暑かったし…そりゃ〜辛かった…
なぜこんなことをしているんだろう
と、自分でも不思議になった

でも、歩くのをやめて帰ろうとか
違う道を行こうかとか
一度も考えなかった

ただ熊野に向かって進んだ

昔の人たちがそうしたように
ただひたすら…めざした

蝉の
命が尽きる前の絶叫ラブコールが
私の出現によって中断されれば
ごめんごめん…すぐ消えるから…続けて続けて…と話しかけ

蜘蛛がせっかく作った芸術性の高い捕獲網を、壊さないようにくぐり
誤って壊してしまった時は、すみません…すみませんと…謝り

トカゲやヘビ…山の妖精たちが挨拶しに来た時は
わざわざありがとうとお礼を言う

ぶつぶつ…言いながら歩いている姿は
はたから見ればかなり危ない

本当…贅沢な旅だった
時間がなければ出来ない旅
電車に乗ればあっという間の距離を、それこそ何時間もかけて歩くのだから

でも…歩いたからこそ
現代人は、時間をお金で買っているんだ…と
つくづく感じることが出来た

歩く…歩く…歩く

辛いけど…実は…峠越えは楽しい
ひたすら歩けば…越えられる

後ろを振り返れば…自分が歩いてきた道が見える
あの山を、越えてきたと思えば…自信になる

高いところから見下ろせば
これからゆく道が、はるか彼方に…でも…ちゃんと見えるのだ

問題は…迷った時

この道でいいのだろうか
この地図は…この道標は、間違っているんじゃなかろうか
疑い始めると…とたん…怖くなる

不思議にキツイ山道では考えないのだけど
だらだらと続く平たんな道で
不安が頭をよぎる

そうすると…とたんに疲れが増し
時間の感覚が麻痺してくる
時間だけが経つような気がして…身体が重くなる

歩くしかないのに…迷う

あと…

登りより下りの方がはるかにキツイ

登りもそりゃキツイ
壁のように見える坂道を登る時は、自分には登れないんじゃないかと不安になる
息も切れるし…汗もかく
自分を励ましながら…声をかけながら
一歩一歩登るしかない

でも、自分のペースで登れる
少し立ち止まり…息を整え
周りの自然の美しさを讃えながら
一歩一歩登ることが出来る

が…下りは…そうはいかいない
引力があるから足が勝手に下りていってしまう

足が着いたところに、枯葉に隠れた穴があったり
どんぐりがころころと転がっていたら
足をとられて…こちらがころころしてしまう

引力に負けないうちに…危険を瞬時に判断し、
的確に足を運ばなくてはならない

下りの方が、周りを眺める余裕がない
ヤケになれば、転がり落ちて行くしかない
下りの方こそ…
慎重に…ということになる

こう書き出してみると
峠越えというのは…人生そのもののように思えてくる

・・・

やっぱりこの旅は修行だったのでしょう

どうやら…しっかり修行せよ!!!と、熊野に呼ばれたみたいです
柔らかい空気に包まれ…幸せな時間でした

日が昇り…日が沈む

熊野の自然が見せてくれた強さ…優しさ…美しさ
きっと…忘れることはないでしょう

最後まで読んで下さって…ありがとうございました

10月1日 いさらい香奈子


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